PM:生き残ることのその先へ

Theresa Saldana『Beyond Survival』全訳

犯罪被害者の二次被害:小金井ストーカー事件の場合 1/5

捏造報道 岩田華怜さんに5年間つきまとっていたストーカーが今年6月にストーカー規制法違反で逮捕されて以降の一連の報道で、メディアの多くは岩田さんを「元AKBで現在は女優」と報じている。「元AKB」とだけしているものもあるが、少なくとも、かつてアイ…

犯罪被害者の二次被害:小金井ストーカー事件の場合 2/5

桶川事件と小金井事件で警察は被害者に何をしたか 桶川事件 桶川事件の被害者をブランド好きの女子大生に仕立て上げるため警察がとった世論誘導の手口は表向きシンプルなものだった。「捜査一課長代理ですから厳しい質問のないようによろしくお願いします」…

犯罪被害者の二次被害:小金井ストーカー事件の場合 3/5

小金井事件でメディアは被害者に何をしたか 小金井事件の初期報道は二重の捏造の産物である。第一に被害者の肩書の捏造、第二に捏造された被害者の肩書を偽りの前提とした事件の原因の捏造。アイドルユニットとしてのシークレットガールズは東京ドームシティ…

犯罪被害者の二次被害:小金井ストーカー事件の場合 4/5

関係者の知る冨田真由さん とかく参照されることの多いウィキペディアが小金井事件の記事(記事の表題は「小金井ストーカー殺人未遂事件」:2018年11月現在)で被害者の肩書を正確に記述していることはせめてもの救いである。 Aは東京都内の私立大学に在籍し…

犯罪被害者の二次被害:小金井ストーカー事件の場合 5/5

もはや取り返しのつかない二次被害 私が小金井事件におけるアイドルの呼称の使用にここまで拘っているのは、小金井事件の報道が招いている二次被害の大本にあるのがその四文字だからである。桶川事件の世論誘導の目標だった「ブランド好きの女子大生」と小金…

小早川明子さんによる小金井ストーカー刺傷事件の論評の問題点

小早川明子さんによる小金井ストーカー刺傷事件の論評には被害者の冨田真由さんへの配慮に欠ける面があると私は感じていた。事件直後の2016年5月27日付の「『ツイッターのブロックや着信拒否をするのは危険』ストーカー相談の専門家に聞く」という見出しを掲…

おわりに

Theresa Saldanaの著書『Beyond Survival 生き残ることのその先へ』をひととおり訳し終えたので、全体を1頁めから最終頁の順に並び替えた。原文で270頁に及ぶテルサ・サルダナからのメッセージに私がつまらぬ解説や感想を加える必要はないので、二、三の事…

Beyond Survival - Prologue

1982年3月、私は幸福で充実した日々を送っていた。私の女優としてのキャリアは上り調子で、私は臨時で大学通いを楽しみ、私のハンサムな夫と私は流行の先端をゆくウエスト・ハリウッドの素敵な集合住宅に住んでいた。フレッドと私はお互いの家族と仲良しで、…

Beyond Survival - Chapter 1 The Attack 1/2

第1章 襲撃(原書1~9頁) 十代の前半から私ははっきりとキャリア志向だった。私はまずニューヨークの舞台女優から始めて、そののち映画やテレビの仕事のためにロサンゼルスへと移った。 襲撃の前までに、私はDefiance(ジャン=マイケル・ヴィンセントの相…

Beyond Survival - Chapter 1 The Attack 2/2

直観的に、私はこの男が電話の主だと気づいた。答えることなく私は走り出そうとしたが、彼は万力のような力で私を鷲掴みに捕らえた。それと同時に彼は肩から掛けていたバッグに手を伸ばし、頭上高く腕を振り上げた。 ぞっとする刹那のなかで、男の拳に5イン…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 1/7

第2章 その後(原書10~44頁) 手術は4時間半にわたって続いた。シーダーズ・サイナイの集中治療室で目を覚ましたとき、私が見たのは光の万華鏡だった。混乱した私は麻酔薬で曇った心を晴らそうと努力した。視点が定まったとき、私は若いブロンドの看護師…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 2/7

ICUでの2日めまでに、私は周りの環境にだんだん注意を向けるようになった。小寝室に毛が生えたていどの広さの私の部屋は、生命維持装置や医療機器でぎゅうぎゅう詰めになっていて、一人の人間が私のベッドサイドを歩くことのできるスペースがかろうじて残さ…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 3/7

襲撃から三日後、私はICUから胸部外科の病棟に移されることになった。私が新しい病室へと押されていったとき、ほかの患者がゆっくりと歩いてホールへ下りていくのを私は見た。はじめて私は、自分が再び歩けるようになるまでどれほどかかるのだろうと考えた。…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 4/7

手の手術からわずか三日後に、裁判の予審が開かれた。腕をまだ牽引された状態で、私は夫に付き添われ、車いすに乗って裁判所へ向かった。フレッドも目撃者として呼び出しを受けていた。私は警察の車でシーダーズから法廷へと連れていかれた。 震えながら私は…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 5/7

ふさわしい行き場所を見つけなければならないという問題はなお残っていたけれども、決心がついたことで私たちの気は楽になった。ジョセフ先生ですらも、私がThaliansで暮らすことを選ばなかったことを静かに喜んでいる風だった。 私はしばしばあの日のことを…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 6/7

私の腕をお湯に漬けているあいだ、フィルは私の手や指を動かすほかのさまざまな処置を実施していた。それらはみな痛みを伴うものだった。私はわめいたり騒いだりすることで多くの患者さんの迷惑になったと思うが、まったく治らないよりもわめきながら治って…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 7/7

犯罪被害に遭ったことは私を孤立し疎外された心境にした。時として私は自分自身をフリークだとみなすことさえあった。自分と同様の体験を生き抜いた人と話す必要を私は感じた。私は手本となる人物を渇望していた――回復して、ふつうの幸福な生活に復帰した健…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 1/6

第3章 恐怖(原書45~74頁) 私たちはたいてい子供の頃に、「怪物」だとか「ブギーマン」だとかにおびえて夜中に泣きながら目を覚ますような時期を通り抜けるものである。両親はそんな私たちを慰めて、大丈夫だよ、怪物なんていないよと言ってくれる。じき…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 2/6

先日、ダイアンと私はランチの席で、お互いが経験した襲撃後の恐怖について話し合った。ダイアンは、恐怖が彼女に、悪夢のような体験を繰り返し繰り返し物語ることを強要してきたと言った。実際、彼女は話すことに駆り立てられていて、聞いてくれる人なら誰…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 3/6

対処メカニズム 自分は恐れているという事実を認めることができたら、次のステップは行動を起こすことである。もちろん、ある日目を覚まして一気にあらゆる恐怖を鎮圧することなど不可能である。しかしあなたは、たとえそれが圧倒的なものにみえたとしても、…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 4/6

ほかのひとびとに手を差し伸べる ひとはなにかを恐れているとき、しばしば他人に助けを求める。既に議論したとおり、これは有効で健全な反応である。しかし、周囲の人から援助を受けることに加えて、恐怖に対処するためのもうひとつの非常に効果的な方法があ…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 5/6

先のことを考える(Forward Thinking) こんなことを何回聞かれたか分からない――「あなたはどうやって生き延びたの?襲われたときだけじゃなくて、その後の日々も」。退院したばかりの頃、私は数々の一般的回答を編み出していた。「人間の強さって驚くべきも…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 6/6

セラピー 今日、私の生活が恐怖から完全に自由であると言ったら嘘をついていることになる。しかし私は私の恐怖と向き合い、それを分析し、それに対処するすべを学んだ。恐怖は私の生活の一部であるが、それはかつてのように私を支配してはいない。私にとって…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 1/9

第4章 怒り(原書75~117頁) 襲撃後まもなくして人々が私のもとを訪れたとき、彼らは私が染みひとつない白い包帯にくるまれ、苦痛のベッドの上で青ざめながらも愛らしく、ありえないくらいの僅かな可能性で命を救われた「ラッキーガール」としての感謝の念…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 2/9

前向きなはけ口 もちろんあなたは、怒りの前向きなはけ口を探し求めなくてはいけない。あなたは口汚く罵ったり、ものを蹴ったり壊したりといった、一般的に言って鬼のごときふるまいを永遠に続けることはできない。どれだけ状況が酷いものであっても、またど…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 3/9

私は自分がまだ車いす生活を余儀なくされていた頃の、映画テレビ基金病院でのある出来事を覚えている。私の左腕は石膏でくるまれていて、私は助けなしでは病院内のあちこちを動くことができなかった。私は自由なほうの腕で車いすの右車輪だけしか押すことが…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 4/9

フランクはいつもいたずらを楽しんでいた。それも時にはけっこうワイルドなやつを。ある朝、若い看護師が小さな黒いプラスチックのバッグを持ってフランクの部屋へ入ってきた。静かに、そしてややこっそりと、彼女はそれをベッドサイドの机の引き出しに入れ…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 5/9

ほかのひとに手を差し伸べる 怒っている人は、ほかの誰かを助けるのにふさわしい人間ではないとあなたは思うかもしれない。しかし怒りはあなたを素晴らしい協力者へと、他人の権利やニーズの擁護者へと動機づける力を持っているのである。 しばしば怒りは私…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 6/9

ひとは時々私に尋ねる、「あなたはどうやって目的のためにそんなにもたくさんの時間と労力を捧げることができるの?」。私の答えは、「それが自分も助けるから」である。そう、私は自分の仕事がひとびとの人生に触れ、彼らに力と勇気を与えることを誇りにし…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 7/9

ジャネット・カイリーを、私は1984年12月のVictims for Victimsのクリスマスパーティの席で知った。長身で魅力的な23歳の彼女は車いすに座り、その脇に彼女の母のヴェラと、親友のアンが寄り添っていた。最初に私の心を捉えたのは、彼女の誘うような満面の微…