PM:生き残ることのその先へ

Theresa Saldana『Beyond Survival』全訳

おわりに

Theresa Saldanaの著書『Beyond Survival 生き残ることのその先へ』をひととおり訳し終えたので、全体を1頁めから最終頁の順に並び替えた。原文で270頁に及ぶテルサ・サルダナからのメッセージに私がつまらぬ解説や感想を加える必要はないので、二、三の事…

Beyond Survival - Prologue

1982年3月、私は幸福で充実した日々を送っていた。私の女優としてのキャリアは上り調子で、私は臨時で大学通いを楽しみ、私のハンサムな夫と私は流行の先端をゆくウエスト・ハリウッドの素敵な集合住宅に住んでいた。フレッドと私はお互いの家族と仲良しで、…

Beyond Survival - Chapter 1 The Attack 1/2

第1章 襲撃(原書1~9頁) 十代の前半から私ははっきりとキャリア志向だった。私はまずニューヨークの舞台女優から始めて、そののち映画やテレビの仕事のためにロサンゼルスへと移った。 襲撃の前までに、私はDefiance(ジャン=マイケル・ヴィンセントの相…

Beyond Survival - Chapter 1 The Attack 2/2

直観的に、私はこの男が電話の主だと気づいた。答えることなく私は走り出そうとしたが、彼は万力のような力で私を鷲掴みに捕らえた。それと同時に彼は肩から掛けていたバッグに手を伸ばし、頭上高く腕を振り上げた。 ぞっとする刹那のなかで、男の拳に5イン…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 1/7

第2章 その後(原書10~44頁) 手術は4時間半にわたって続いた。シーダーズ・サイナイの集中治療室で目を覚ましたとき、私が見たのは光の万華鏡だった。混乱した私は麻酔薬で曇った心を晴らそうと努力した。視点が定まったとき、私は若いブロンドの看護師…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 2/7

ICUでの2日めまでに、私は周りの環境にだんだん注意を向けるようになった。小寝室に毛が生えたていどの広さの私の部屋は、生命維持装置や医療機器でぎゅうぎゅう詰めになっていて、一人の人間が私のベッドサイドを歩くことのできるスペースがかろうじて残さ…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 3/7

襲撃から三日後、私はICUから胸部外科の病棟に移されることになった。私が新しい病室へと押されていったとき、ほかの患者がゆっくりと歩いてホールへ下りていくのを私は見た。はじめて私は、自分が再び歩けるようになるまでどれほどかかるのだろうと考えた。…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 4/7

手の手術からわずか三日後に、裁判の予審が開かれた。腕をまだ牽引された状態で、私は夫に付き添われ、車いすに乗って裁判所へ向かった。フレッドも目撃者として呼び出しを受けていた。私は警察の車でシーダーズから法廷へと連れていかれた。 震えながら私は…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 5/7

ふさわしい行き場所を見つけなければならないという問題はなお残っていたけれども、決心がついたことで私たちの気は楽になった。ジョセフ先生ですらも、私がThaliansで暮らすことを選ばなかったことを静かに喜んでいる風だった。 私はしばしばあの日のことを…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 6/7

私の腕をお湯に漬けているあいだ、フィルは私の手や指を動かすほかのさまざまな処置を実施していた。それらはみな痛みを伴うものだった。私はわめいたり騒いだりすることで多くの患者さんの迷惑になったと思うが、まったく治らないよりもわめきながら治って…

Beyond Survival - Chapter 2 The Aftermath 7/7

犯罪被害に遭ったことは私を孤立し疎外された心境にした。時として私は自分自身をフリークだとみなすことさえあった。自分と同様の体験を生き抜いた人と話す必要を私は感じた。私は手本となる人物を渇望していた――回復して、ふつうの幸福な生活に復帰した健…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 1/6

第3章 恐怖(原書45~74頁) 私たちはたいてい子供の頃に、「怪物」だとか「ブギーマン」だとかにおびえて夜中に泣きながら目を覚ますような時期を通り抜けるものである。両親はそんな私たちを慰めて、大丈夫だよ、怪物なんていないよと言ってくれる。じき…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 2/6

先日、ダイアンと私はランチの席で、お互いが経験した襲撃後の恐怖について話し合った。ダイアンは、恐怖が彼女に、悪夢のような体験を繰り返し繰り返し物語ることを強要してきたと言った。実際、彼女は話すことに駆り立てられていて、聞いてくれる人なら誰…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 3/6

対処メカニズム 自分は恐れているという事実を認めることができたら、次のステップは行動を起こすことである。もちろん、ある日目を覚まして一気にあらゆる恐怖を鎮圧することなど不可能である。しかしあなたは、たとえそれが圧倒的なものにみえたとしても、…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 4/6

ほかのひとびとに手を差し伸べる ひとはなにかを恐れているとき、しばしば他人に助けを求める。既に議論したとおり、これは有効で健全な反応である。しかし、周囲の人から援助を受けることに加えて、恐怖に対処するためのもうひとつの非常に効果的な方法があ…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 5/6

先のことを考える(Forward Thinking) こんなことを何回聞かれたか分からない――「あなたはどうやって生き延びたの?襲われたときだけじゃなくて、その後の日々も」。退院したばかりの頃、私は数々の一般的回答を編み出していた。「人間の強さって驚くべきも…

Beyond Survival - Chapter 3 Fear 6/6

セラピー 今日、私の生活が恐怖から完全に自由であると言ったら嘘をついていることになる。しかし私は私の恐怖と向き合い、それを分析し、それに対処するすべを学んだ。恐怖は私の生活の一部であるが、それはかつてのように私を支配してはいない。私にとって…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 1/9

第4章 怒り(原書75~117頁) 襲撃後まもなくして人々が私のもとを訪れたとき、彼らは私が染みひとつない白い包帯にくるまれ、苦痛のベッドの上で青ざめながらも愛らしく、ありえないくらいの僅かな可能性で命を救われた「ラッキーガール」としての感謝の念…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 2/9

前向きなはけ口 もちろんあなたは、怒りの前向きなはけ口を探し求めなくてはいけない。あなたは口汚く罵ったり、ものを蹴ったり壊したりといった、一般的に言って鬼のごときふるまいを永遠に続けることはできない。どれだけ状況が酷いものであっても、またど…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 3/9

私は自分がまだ車いす生活を余儀なくされていた頃の、映画テレビ基金病院でのある出来事を覚えている。私の左腕は石膏でくるまれていて、私は助けなしでは病院内のあちこちを動くことができなかった。私は自由なほうの腕で車いすの右車輪だけしか押すことが…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 4/9

フランクはいつもいたずらを楽しんでいた。それも時にはけっこうワイルドなやつを。ある朝、若い看護師が小さな黒いプラスチックのバッグを持ってフランクの部屋へ入ってきた。静かに、そしてややこっそりと、彼女はそれをベッドサイドの机の引き出しに入れ…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 5/9

ほかのひとに手を差し伸べる 怒っている人は、ほかの誰かを助けるのにふさわしい人間ではないとあなたは思うかもしれない。しかし怒りはあなたを素晴らしい協力者へと、他人の権利やニーズの擁護者へと動機づける力を持っているのである。 しばしば怒りは私…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 6/9

ひとは時々私に尋ねる、「あなたはどうやって目的のためにそんなにもたくさんの時間と労力を捧げることができるの?」。私の答えは、「それが自分も助けるから」である。そう、私は自分の仕事がひとびとの人生に触れ、彼らに力と勇気を与えることを誇りにし…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 7/9

ジャネット・カイリーを、私は1984年12月のVictims for Victimsのクリスマスパーティの席で知った。長身で魅力的な23歳の彼女は車いすに座り、その脇に彼女の母のヴェラと、親友のアンが寄り添っていた。最初に私の心を捉えたのは、彼女の誘うような満面の微…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 8/9

セラピー 私たちが自分の怒りに向き合い、それを克服しようとしている時、すぐれたセラピストの存在ははかりしれない財産となるだろう。彼または彼女は、怒りを表現し、それを方向づけ、私たちの利益になるようそれを活用すらするための方法を教示することが…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 9/9

隠れた怒り 大部分において、私は自分の怒りを常に自由にあからさまに表してきた。それは私にとっても、他の皆にとっても、明らかに見てとれる状態でそこにある。しかしほかの多くの人々にとって、怒りはそれがそこに存在することに気づくことすらできないく…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 1/10

第5章 痛み(118~175頁) なぜ蛇が邪悪さやあるいは死の象徴にしばしば用いられるのか、私はよく理解できる。襲撃後の悪夢のような日々に、とぐろを巻いた、鋭い歯の、テラテラした生き物のイメージが私の意識に浮かんでは消えていったのだった。 私はあれ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 2/10

事態の厳しく冷酷な現実は「私に選択の余地はない」だった。過去において、苦痛が私の前に現れたとき、私は種々様々な手を見つけ出してそれを避けるか弱めるかしていた。しかし襲撃の後、私はそこのベッドの上に囚われ、多数の刺し傷とつらい医療処置の結果…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 3/10

セラピー 最近私は、疼痛管理の分野の3人のエキスパートに同時に会う光栄な機会を得た。ロサンゼルス・セント・ヴィンセント病院のペインリハビリテーション・プログラム(ペインスクールあるいはペインセンターの名でも知られている)のディレクターである…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 4/10

襲撃によって私が患った圧迫神経は、のちに私の首や背中、肩にかなりの痛みとストレスと緊張を引き起こした。不快感を完全になくすことは二度とできないように思われた。今でも私の首と肩は強張りがちである。しょっちゅう私は苦痛をやわらげるために、首を…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 5/10

Forward Thinking(先のことを考える) 痛みのもっとも不快な側面のひとつは、それが感覚を圧倒してしまう傾向である。それは接着剤のように私たちにくっつき、満たし、滲みわたり、圧迫し、いったん私たちを手中に捉えると、決して私たちを放そうとしないよ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 6/10

Forward Thinking(先のことを考える) 成功を収めたマイアミの弁護士のイーディス・バーゼイは、活力あり、自立心に富んだ、たたき上げの女性である。35歳にして、彼女はこの分野でもっとも尊敬を集めている人物のひとりである。創造的にして雄弁、鋭いウィ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 7/10

ほかのひとに手を差し伸べる 襲撃からほどなくして私は、自分の体につけられた傷から完全に自由になることは二度とないだろうという厳しい現実の認識と向き合うことになった。しかし私は残りの人生を、あのおぞましい一日の記憶を呼び覚ます、凄惨な眺めの、…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 8/10

その晩早く、運営委員会に出席するため人々が集まり出したころに私は目を覚ました。目を開けるとほとんど同時に、痛みがその醜い顔をもたげた。私はすっかり休息して頭は冴えていたが、肉体は痛みに苛まれていた。すぐさま私は注射を頼みたい誘惑に駆られた…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 9/10

リタは眼のくらむような頭痛と全身の痛みで目覚めた。彼女の美しいブロンドの髪は乾いた血でゴワゴワになっていた。彼女はゆっくりとバスルームへ歩いていった。体じゅうがズキズキ痛んだ。 鏡を見たとき、リタは大声で叫んだ、「これが私なんてありえない」…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 10/10

その後リタとテリは週に2、3回会うようになった。彼らは殴打に関する本や記事を貸し合って読んだ。 リタは、虐待された女性と、彼らがどうメディアで取り扱われているかをテーマとして修士論文を書くことにした(彼女は州立大学でコミュニケーション学を専…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 1/16

第6章 家族と友人たち(原書176~267頁) 子煩悩な母 誇り高い父 愛する配偶者 情熱的な恋人 愛情溢れる姉妹 頼りになる兄弟 最高の友 思いやりある従妹 お気に入りの叔母 陽気な叔父 優しい祖母 献身的な祖父 これらの特別なひとびとが、彼らが愛する誰か…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 2/16

私たちがいなくなってから、母はこれまでより時間を持て余すようになった。折にふれて彼女の考えは事件とその余波のほうへと向かった。ママは自分の感じていることを人と分かち合いたいと切望していたが、ほとんどの人は、彼女の心を蝕んでいる不穏な事柄を…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 3/16

内部サークル 犯罪被害者の内部サークル(inner circle)は、すべての血縁者、愛する人たち、被害者の人生に重要な役割を果たしている友人たちで構成される。これらは襲撃の後でもっとも頻繁に被害者が関わるだろう人々である。そして彼らはその肩に、被害者…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 4/16

危機の後に おそらくは3日か4日以内に――死のおそれが続いているのでなければ――事態は落ち着きをみせはじめる。この時点で被害者はなおも多くの格別な配慮と注意を必要としているが、それでも自分の周囲に今までより少しだけ関心を向けられるようになってき…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 5/16

ほかのひとびとに手を差し伸べる さまざまな犯罪被害者の内部サークルのメンバーの発言からの抜粋: ミーガンのボーイフレンドのジェイクに感謝したいです。彼がいなかったら私は気がおかしくなっていたでしょう。――強姦致傷事件の被害者の母 私の妻は本当に…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 6/16

「私の家族に感謝――私がもっともよく口にし、考えている言葉はそれです。私たちはいつもお互いに対してまったく誠実であることができました。時には意見が合わないこともありますが、私たちは常に互いを支え合っています」 「ユタへの旅行は子供たちがまだ小…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 7/16

バーバラ・モリスはベルモントに住んでいる。彼女がインタビューに応じてくれるとの彼女の母の知らせを受けて、私は自宅にいるバーバラに電話をかけた。 大学教授の妻であるバーバラは、ニューイングランドの美しい田舎町で充実した生活を楽しんでいる。バー…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 8/16

ユーモア 犯罪の被害直後の日々の生活は、関係するすべての人にとって、苦痛に満ち、混沌として、苛立たしいものであるが、そのうち被害者とその内部サークルの人々は、最悪の場面にもそれなりの軽さ、気楽さ、可笑しみが浮かび上がる瞬間があることを発見す…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 9/16

私の妹のマリアが小さな少女だったころ、彼女はなにか問題が生じたときはいつでもヒステリックに笑っていたことを私は覚えている。例えばある日、隣家の住人のヨハンセン夫人が足を滑らせて階段を転げ落ちた。幸い彼女に怪我はなかったが、彼女が落ちるとこ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 10/16

Forward Thinking(先のことを考える) 犯罪被害者自身と同様にかれの内部サークルの人々も、より幸福で、より苦痛が少なく、より平穏であろう未来の方角に目を向ける必要がある。 自分に近しい誰かが犯罪被害に遭ったあと、彼らは一見したところ終わりなき…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 11/16

以前言ったように、私の妹のマリアは、私が退院した直後に彼女がロサンゼルスで常時の付き添いとして私と暮らしていた過酷な時期を乗り切るために、forward thinkingの力をおおいに頼りとしていた。 マリアはこの困難な時期をとおして私のそばに寄り添い、手…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 12/16

セラピー 犯罪被害に遭うことによるストレスや緊張と、それに続く幾多の困難のもとで、結婚生活、恋愛関係、家族の絆や友情が揺さぶられたり、あるいは完全に壊れてしまうのはきわめてよくあることである。事件の前には事実上トラブルと無縁であった関係でさ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 13/16

私のリクエストで、クレア氏は私を、彼女が犯罪被害後のカウンセリングをしているシーラ&マーティン・コベルのカップルに引き合わせてくれた。彼らは私をブランチの席に招待し、その後私は一人ひとりと個別にインタビューを行った。 約束の日の朝に、私はビ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 14/16

シーラは夫との合同セラピーのいっぽうで、ひきつづきナンシー・クレスと個人でも会っていた。個別と合同のセッションはそれぞれ別の理由で有効であることに彼女は気づいた。個別のセッションでシーラは彼女の心の奥底へと分け入り、彼女のもっとも深いとこ…