PM:生き残ることのその先へ

Theresa Saldana『Beyond Survival』全訳

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 8/9

セラピー 私たちが自分の怒りに向き合い、それを克服しようとしている時、すぐれたセラピストの存在ははかりしれない財産となるだろう。彼または彼女は、怒りを表現し、それを方向づけ、私たちの利益になるようそれを活用すらするための方法を教示することが…

Beyond Survival - Chapter 4 Anger 9/9

隠れた怒り 大部分において、私は自分の怒りを常に自由にあからさまに表してきた。それは私にとっても、他の皆にとっても、明らかに見てとれる状態でそこにある。しかしほかの多くの人々にとって、怒りはそれがそこに存在することに気づくことすらできないく…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 1/10

第5章 痛み(118~175頁) なぜ蛇が邪悪さやあるいは死の象徴にしばしば用いられるのか、私はよく理解できる。襲撃後の悪夢のような日々に、とぐろを巻いた、鋭い歯の、テラテラした生き物のイメージが私の意識に浮かんでは消えていったのだった。 私はあれ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 2/10

事態の厳しく冷酷な現実は「私に選択の余地はない」だった。過去において、苦痛が私の前に現れたとき、私は種々様々な手を見つけ出してそれを避けるか弱めるかしていた。しかし襲撃の後、私はそこのベッドの上に囚われ、多数の刺し傷とつらい医療処置の結果…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 3/10

セラピー 最近私は、疼痛管理の分野の3人のエキスパートに同時に会う光栄な機会を得た。ロサンゼルス・セント・ヴィンセント病院のペインリハビリテーション・プログラム(ペインスクールあるいはペインセンターの名でも知られている)のディレクターである…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 4/10

襲撃によって私が患った圧迫神経は、のちに私の首や背中、肩にかなりの痛みとストレスと緊張を引き起こした。不快感を完全になくすことは二度とできないように思われた。今でも私の首と肩は強張りがちである。しょっちゅう私は苦痛をやわらげるために、首を…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 5/10

Forward Thinking(先のことを考える) 痛みのもっとも不快な側面のひとつは、それが感覚を圧倒してしまう傾向である。それは接着剤のように私たちにくっつき、満たし、滲みわたり、圧迫し、いったん私たちを手中に捉えると、決して私たちを放そうとしないよ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 6/10

Forward Thinking(先のことを考える) 成功を収めたマイアミの弁護士のイーディス・バーゼイは、活力あり、自立心に富んだ、たたき上げの女性である。35歳にして、彼女はこの分野でもっとも尊敬を集めている人物のひとりである。創造的にして雄弁、鋭いウィ…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 7/10

ほかのひとに手を差し伸べる 襲撃からほどなくして私は、自分の体につけられた傷から完全に自由になることは二度とないだろうという厳しい現実の認識と向き合うことになった。しかし私は残りの人生を、あのおぞましい一日の記憶を呼び覚ます、凄惨な眺めの、…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 8/10

その晩早く、運営委員会に出席するため人々が集まり出したころに私は目を覚ました。目を開けるとほとんど同時に、痛みがその醜い顔をもたげた。私はすっかり休息して頭は冴えていたが、肉体は痛みに苛まれていた。すぐさま私は注射を頼みたい誘惑に駆られた…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 9/10

リタは眼のくらむような頭痛と全身の痛みで目覚めた。彼女の美しいブロンドの髪は乾いた血でゴワゴワになっていた。彼女はゆっくりとバスルームへ歩いていった。体じゅうがズキズキ痛んだ。 鏡を見たとき、リタは大声で叫んだ、「これが私なんてありえない」…

Beyond Survival - Chapter 5 Pain 10/10

その後リタとテリは週に2、3回会うようになった。彼らは殴打に関する本や記事を貸し合って読んだ。 リタは、虐待された女性と、彼らがどうメディアで取り扱われているかをテーマとして修士論文を書くことにした(彼女は州立大学でコミュニケーション学を専…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 1/16

第6章 家族と友人たち(原書176~267頁) 子煩悩な母 誇り高い父 愛する配偶者 情熱的な恋人 愛情溢れる姉妹 頼りになる兄弟 最高の友 思いやりある従妹 お気に入りの叔母 陽気な叔父 優しい祖母 献身的な祖父 これらの特別なひとびとが、彼らが愛する誰か…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 2/16

私たちがいなくなってから、母はこれまでより時間を持て余すようになった。折にふれて彼女の考えは事件とその余波のほうへと向かった。ママは自分の感じていることを人と分かち合いたいと切望していたが、ほとんどの人は、彼女の心を蝕んでいる不穏な事柄を…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 3/16

内部サークル 犯罪被害者の内部サークル(inner circle)は、すべての血縁者、愛する人たち、被害者の人生に重要な役割を果たしている友人たちで構成される。これらは襲撃の後でもっとも頻繁に被害者が関わるだろう人々である。そして彼らはその肩に、被害者…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 4/16

危機の後に おそらくは3日か4日以内に――死のおそれが続いているのでなければ――事態は落ち着きをみせはじめる。この時点で被害者はなおも多くの格別な配慮と注意を必要としているが、それでも自分の周囲に今までより少しだけ関心を向けられるようになってき…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 5/16

ほかのひとびとに手を差し伸べる さまざまな犯罪被害者の内部サークルのメンバーの発言からの抜粋: ミーガンのボーイフレンドのジェイクに感謝したいです。彼がいなかったら私は気がおかしくなっていたでしょう。――強姦致傷事件の被害者の母 私の妻は本当に…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 6/16

「私の家族に感謝――私がもっともよく口にし、考えている言葉はそれです。私たちはいつもお互いに対してまったく誠実であることができました。時には意見が合わないこともありますが、私たちは常に互いを支え合っています」 「ユタへの旅行は子供たちがまだ小…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 7/16

バーバラ・モリスはベルモントに住んでいる。彼女がインタビューに応じてくれるとの彼女の母の知らせを受けて、私は自宅にいるバーバラに電話をかけた。 大学教授の妻であるバーバラは、ニューイングランドの美しい田舎町で充実した生活を楽しんでいる。バー…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 8/16

ユーモア 犯罪の被害直後の日々の生活は、関係するすべての人にとって、苦痛に満ち、混沌として、苛立たしいものであるが、そのうち被害者とその内部サークルの人々は、最悪の場面にもそれなりの軽さ、気楽さ、可笑しみが浮かび上がる瞬間があることを発見す…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 9/16

私の妹のマリアが小さな少女だったころ、彼女はなにか問題が生じたときはいつでもヒステリックに笑っていたことを私は覚えている。例えばある日、隣家の住人のヨハンセン夫人が足を滑らせて階段を転げ落ちた。幸い彼女に怪我はなかったが、彼女が落ちるとこ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 10/16

Forward Thinking(先のことを考える) 犯罪被害者自身と同様にかれの内部サークルの人々も、より幸福で、より苦痛が少なく、より平穏であろう未来の方角に目を向ける必要がある。 自分に近しい誰かが犯罪被害に遭ったあと、彼らは一見したところ終わりなき…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 11/16

以前言ったように、私の妹のマリアは、私が退院した直後に彼女がロサンゼルスで常時の付き添いとして私と暮らしていた過酷な時期を乗り切るために、forward thinkingの力をおおいに頼りとしていた。 マリアはこの困難な時期をとおして私のそばに寄り添い、手…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 12/16

セラピー 犯罪被害に遭うことによるストレスや緊張と、それに続く幾多の困難のもとで、結婚生活、恋愛関係、家族の絆や友情が揺さぶられたり、あるいは完全に壊れてしまうのはきわめてよくあることである。事件の前には事実上トラブルと無縁であった関係でさ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 13/16

私のリクエストで、クレア氏は私を、彼女が犯罪被害後のカウンセリングをしているシーラ&マーティン・コベルのカップルに引き合わせてくれた。彼らは私をブランチの席に招待し、その後私は一人ひとりと個別にインタビューを行った。 約束の日の朝に、私はビ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 14/16

シーラは夫との合同セラピーのいっぽうで、ひきつづきナンシー・クレスと個人でも会っていた。個別と合同のセッションはそれぞれ別の理由で有効であることに彼女は気づいた。個別のセッションでシーラは彼女の心の奥底へと分け入り、彼女のもっとも深いとこ…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 15/16

私はナンシー・クレスに、内部サークルのメンバーは被害者に向かって具体的にどの程度オープンにふるまうべきかを尋ねた。 彼女は言った、「被害者ははじめのうちある程度の保護が必要です。オープンであることは被害者を圧倒することを意味するものではあり…

Beyond Survival - Chapter 6 Family and Friends 16/16

ボズレー氏の反応は、ある種ガチガチの禁欲主義だった。はじめ彼は加害者に対する恨みと怒りを露わにし、「奴の足をへし折ってやる」と脅し文句を口にした。その後彼は、強固にして静かなる行動パターンへと落ち着いた。彼は妻が頼りにすることのできる人間…

Beyond Survival - Epilogue

エピローグ(原書268~270頁) 私が今日を生きていることを感謝することなく過ぎていく日は一日もない。 私がいま送っている生は、私が事件の前に送っていた生とはたしかに異なっている。それは変貌した生である。複雑化した生である。いくらかのやや普通な…

はじめに:テレサ・サルダナと冨田真由さん

BS 2016年6月6日に亡くなったアメリカの女優Theresa Saldanaの1986年出版の著書、Beyond Survival(『生き残ることのその先へ』)を全訳することにした。 1954年8月20日にニューヨークのブルックリンで生まれたテレサ・サルダナは、10代の頃に地元のアマチュ…